鍵穴にクレ5-56を使ってはいけない理由と使ってしまった場合の対処法

更新日:2023/07/12
鍵穴にクレ5-56を使ってはいけない理由と使ってしまった場合の対処法

この記事でわかること

  • 鍵穴に誤ってクレ556を使用してしまったときの対処法
  • 鍵穴にクレ556を使用してはいけない理由
  • 鍵が回りにくい・開けにくいときの対処法

クレ5-56は、使用用途が広く、ホームセンターで手頃に購入できるため、常備している方も多いでしょう。鍵の動きや刺さりが悪いときにクレ5-56を使用したことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

結論から申しますと、鍵穴にクレ5-56を使用することは厳禁です。最悪の場合、鍵が故障してしまったり、修理が必要な事態にもなりかねません。

そこで今回は、鍵穴にクレ5-56を使ってはいけない理由と、万が一使用してしまった場合の対処法をご紹介します。

クレ5-56について

クレ556

通称「5-56」、「CRC」などと呼ばれることが多い「クレ5-56」ですが、どのような商品なのでしょうか?

クレ5-56の正式名称は「KURE CRC 5-56」と言い、呉工業株式会社が製造販売している浸透潤滑剤です。開発元はアメリカのペンシルベニア州に本社を置くCRCインダストリー社であり、主に機械や金属パーツの潤滑、防錆、サビ落としのために使われます。

自動車やバイク、工具、精密機器、固着したネジなど、幅広い用途に使用できることに加え、価格もお手頃なので、一本はご家庭や車内に常備されている方も多いでしょう。

しかし、石油系溶剤を含んでいるため、無香性のものを除き、ゴムや樹脂類であるプラスチック、塗装面に使うことはできないので注意が必要です。

【クレ5-56のラインナップ】

クレ5-56には、使用用途に合わせてさまざまな種類があります。

5-56

金属表面に使用できます。スプレー缶容量は、70ml、80ml、180ml、220ml、320ml、430mlと、業務用785 L(1ガロン)、18.925 L(5ガロン)があります。

5-56無香性

ゴム・プラスチックにも使用できる無香性タイプです。70ml、220ml、320ml、330mlのスプレー缶の他に、8mlのペンタイプ、業務用785 L(1ガロン)、18.925 L(5ガロン)、208.175L(55ガロン缶)があります。

スーパー5-56

PTFE(フッ素樹脂)と特殊添加剤を配合したタイプです。容量は70ml、320ml、435mlのスプレー缶のみとなっています。

5-56 DX

SPA(Synthetic Penetrating Agent)配合により浸透性、拡散性を幅に向上した、5-56の最上位タイプです。容量は70ml、420mlのスプレー缶があります。

クレ5-56を鍵穴に使えない理由

鍵穴は、金属同士が擦れ合う部分でもあるので、少しずつ摩耗や劣化が進んでいきます。そのため、長く鍵を使っていると、「鍵穴の回りが渋い」「鍵を差し込みにくい」といった不具合も発生してきます。

特に玄関の鍵は、毎日何度も使うので不具合が起きるペースも早いでしょう。

そんなとき、自宅や車に常備しているクレ5-56を鍵穴に吹きつける方もいます。しかし、鍵の動きを滑らかにしようとクレ5-56を使用することは鍵穴にとっては逆効果です。

確かに、潤滑剤であるクレ5-56は、金属である鍵穴にも有効だと勘違いされがちですが、潤滑の効果は一時的なもので、後に重大な問題を引き起こす原因となります。

具体的には、以下の要因で鍵穴が故障してしまう恐れがあります。

鍵穴内部に汚れが溜まりやすくなる

クレ5-56には粘着性があります。鍵穴に使うと潤滑剤の油分が、ほこりや砂、金属粉を鍵穴内部で溜め込んでしまい、油分と汚れが混ざった塊が発生し、やがて内部の細くて小さいバネなどの部品が固まって動かなくなることがあります。

この塊が蓄積し、鍵穴の詰まり、動作不良の原因となり、場合によっては鍵穴が使えなくなってしまいます。

鍵穴内部のグリース類を溶かしてしまう

クレ5-56の成分は石油系溶剤であるため、鍵穴に元々塗られているグリースまで溶かしてしまいます。そのため、鍵穴の動作不良や錆、故障などに繋がります。

以上のことから、販売元の呉工業はディンプル錠など、複雑な構造を持つシリンダーにはクレ5-56を使用しないよう言及しています。また、大手鍵メーカーである美和ロックなども鍵穴にクレ5-56のような鍵穴用ではない潤滑剤を使用しないよう警告しています。

基本的に鍵穴専用のスプレー以外は使用しない

クレ5-56以外にも、油分が残るものはシリンダー(鍵穴)にとってNGです。石油系溶剤は、薄い膜を作って潤滑、防錆の効果を生み出します。同じような仕組みで、防水や撥水効果、ツヤを与えるシリコンスプレーなども、上記で紹介したことと同様の理由で使用することはできません。

シリンダーだけに留まらず、錠ケースも小さな駆動部品が集まっていますので、クレ5-56やシリコンスプレーをフロント部分にあるラッチ、デッドボルトに吹き付けたりしないことが大切です。

鍵穴にクレ5-56を使ってしまったときの対処法

こういった事情を知らずに、万が一、クレ5-56を鍵穴に使ってしまった場合はどうすれば良いのでしょうか?ここからは、対処法について紹介していきます。

鍵穴専用潤滑剤を使用する

鍵穴専用潤滑剤(カバクリーナー)

クレ5-56を鍵穴内部に吹き付けてからあまり時間が経過してない場合は鍵穴専用潤滑剤を使って潤滑剤と汚れを洗い流してみましょう。鍵穴に使われる専用の洗浄剤や潤滑剤は、揮発性であり速乾性が高いです。

そのため、鍵穴に吹き付けても詰まりなどの心配もなく、部品への影響もありません。このような鍵専用のスプレーはメーカーごとに販売されていますので、不具合が起きている鍵のメーカーのものを使うと安心できるでしょう。

パーツクリーナーを使用する

クレ5-56を吹き付けてから暫く時間が経過しており、動きが固くなるなどしている場合は、パーツクリーナーのような揮発性で速乾性の油分を除去するスプレーを使用して鍵穴を洗浄します。

鍵穴の洗浄は、シリンダーをドアから外し、内筒を抜いて行うのがベストです。抜き出した内筒にまんべんなくパーツクリーナーを吹きつけて汚れを落としていきます。

シリンダーを分解して内筒を取り出せない場合は、乾燥までに時間がかかりますし、どれだけ汚れが落ちたのか確認することができませんので、子鍵を抜き差しして汚れた液体が残っているか、まだ内部が湿っているか、様子を伺いながら洗浄して下さい。

シリンダーはどちらのケースでも乾燥後に鍵穴専用の潤滑剤を少量使用して動きがスムーズになるようにします。鍵穴に直接吹き付けるのも構いませんが、子鍵に潤滑剤を吹き付けてから子鍵を抜き差ししてやる方が過剰な分量を鍵穴内に残さずに済みます。

鍵穴専用潤滑剤は、細かい粒子を鍵穴内に残しますので、吹き付けすぎはよくありません。

また、鍵穴内に水分が残っていたりする場合はダマになってしまい、余計に不具合の原因となってしまいます。鍵穴専用潤滑剤をスプレーする場合は雨の日などは避け、シリンダー内が十分乾燥していることを確認しておきましょう。

鍵が回らず家に入れない状態で、シリンダーが取り外せない場合ですと、パーツクリーナーをそのまま鍵穴に噴射することになります。

しかし、これをやり過ぎてしまうと、錠ケース内のグリースが溶けてしまうだけでなく、シリンダーの汚れが錠ケースに流れていく可能性がありますので、使用量には注意しつつ作業を行なってください。

鍵屋に分解洗浄を依頼する

クレ5-56を使用してから数日〜2週間程度経過している場合、すでにシリンダー内部で油分や汚れが固まっている恐れがあります。

パーツクリーナーや鍵穴専用の潤滑剤を使用しても鍵がまわらないという場合は、シリンダーを取り外して分解洗浄を行う必要があります。

こうなった場合は、無理に個人の力で解決しようとせず鍵屋にご相談ください。鍵の構造は非常に複雑で繊細です。

細かい部品も多くあるため、知識のない方が下手に手を出してしまうと、元通りに組み立てられなかったり、鍵として機能しなくなってしまう可能性が高いです。

また、鍵屋であればシリンダーと錠ケースどちらも分解洗浄をしてグリスアップすることができます。

鍵屋に鍵(シリンダー・錠前)の交換を依頼する

鍵屋に依頼しても、分解洗浄が困難な状態や、内部の摩耗、損傷がある場合はシリンダーや錠前を交換する必要があります。

特に、ディンプルキーなどの防犯性に優れた高性能キーは、構造が複雑なためプロの鍵屋に依頼しても、ほとんどの場合、交換対応になります。

ちなみに、鍵穴部分のみを交換する「シリンダー交換」の方が費用は抑えられます。しかし、錠前の種類によってはシリンダーだけを交換することができないものもあり、鍵全体を交換する「錠前交換」になることもあります。

作業前に説明と見積書をしっかり確認してください。

鍵が回しにくい、固いといった症状は、経年劣化や異物のつまりが原因であることがほとんどです。確かに洗浄や潤滑剤の塗布で改善されることもありますが、一時凌ぎ的な部分が大きく問題解決には至りません。

分解洗浄には保証もつかないことも多いため、鍵屋としては、できれば交換をおすすめします。

鍵が開けにくい場合の対処法

鍵のトラブル時は、クレ5-56などの石油系溶剤を鍵穴に使わないことが大切です。ここでは、鍵が開けにくい場合の適切な対処法をご紹介します。

鍵穴内を掃除する

鍵穴を掃除

「鍵が差し込めない」「鍵の周りが悪い」といった不具合の場合、鍵穴内部にごみ、異物が詰まっていることが考えられます。外部と面している玄関の鍵穴は、ほこりや砂といった些細なごみが蓄積しやすく、シリンダーの動作に干渉してしまうことがあります。

その場合は、鍵穴を掃除してみましょう。ただし、内部のごみや異物を掻き出そうと、鍵穴内に針金や爪楊枝などを挿し込むことはやめてください。

鍵穴内部は非常にデリケートであり、針金などで内部に傷をつけただけでその鍵が使用不能になることもあります。また、爪楊枝の場合、内部で折れてしまうことも考えられます。

鍵穴を掃除する際は、掃除機を鍵穴に当てて内部の細かいごみを吸い込むことで鍵の動作不良が解消されることがあります。また、エアダスターで内部のごみを除去するのも有効でしょう。

鍵穴専用の潤滑剤を塗布する

鍵穴専用の潤滑剤はホームセンターやネットでも購入できます。シリンダー内部にはもともと潤滑剤が塗られていますが、経年や使用を重ねるうちに乾いたり減ったりしていくため、滑りが悪くなってきます。

そのため、鍵穴内部を掃除しても動きが改善しないようであれば、潤滑剤が枯渇している可能性もあるため、鍵穴専用潤滑剤を使用してみましょう。

前述したように、クレ5-56やシリコンスプレー、食用油などの油分を潤滑剤がわりに使用することは絶対にやめてください。

また、鍵穴専用潤滑剤を使用する際に注意点として、鍵穴に水分がない状態で使用するようにしてください。鍵穴専用潤滑剤には細かい粒子が含まれているため、鍵穴が濡れている場合、油分を含むスプレーと同様、粒子がダマになってしまい詰まりの原因になってしまいます。

応急処置として鉛筆の芯を使う

鍵に鉛筆を滑らせる

鍵専用の潤滑剤が手元にない場合は、鉛筆の芯を塗布した子鍵を鍵穴に抜き差しすることで潤滑効果を得ることができます。

鉛筆の芯には黒鉛が含まれており、黒鉛には潤滑性が備わっています。鉛筆は黒鉛の含有量が多い、Bや2B以上を使うと良いでしょう。鉛筆がない場合は、シャープペンシルでも代用できます。

鍵穴にクレ5-56を使ってしまった場合は鍵屋に連絡するのがおすすめ

クレ5-56は鍵穴にとって実はなかなか有害だということが理解いただけたかと思います。もし、鍵穴にクレ5-56などの潤滑剤を使ってしまった場合は速やかな洗浄が必要です。

鍵穴を洗浄したとしても、シリンダー内に残留した潤滑剤にごみやほこりが付着して固まり、詰まってしまうことや、溶剤成分がシリンダー内にもともと塗布されている潤滑剤を溶かしてしまう恐れもあります。

そのような状態を長い間放置しては、ある日突然鍵が動かなくなってしまったり、鍵の分解洗浄が必要になることもあります。

クレ5-56を使用してしまったあと、鍵の不具合が発生したり、鍵のトラブルが起きないか心配な方はできるだけ早いうちに鍵屋へ相談するようにしてください。

クレ5-56を鍵穴に使ってしまった後のトラブルは鍵屋キーホースへご相談ください!

今回は、鍵穴にクレ5-56を使ってはいけない理由と、使ってしまった場合の対処法について紹介させていただきました。

クレ5-56は広く普及している潤滑剤であり、多くのご家庭や職場でも常備されています。

クレ5-56自体の油分は、使う用途によっては大変有効ですが、鍵穴にとっては大変不向きです。また、クレ5-56以外にも他の一般的な金属潤滑剤、潤滑油も鍵穴には使用できないので注意してください。

鍵穴には専用の潤滑剤を使用し、それでも鍵の不具合が改善しない場合は、下手に手を出さず鍵屋へご相談いただくのがおすすめです。

鍵屋キーホースは、シリンダーや錠前の分解洗浄はもちろん、鍵交換を行うことも可能です。

まずはお気軽にお電話にてご相談ください。

お電話は0120-955-127

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